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2017.01.26

【B面】応急の応急でもいい! 災害復興に見る、感性の企画力

 

【インタビュー「企画人」 】
「企画人」は自由だ。働き方も自由だ。理想と現実のギャップを埋めるチカラ、「企画力」があれば、仕事も、はたらきカタも、プライベートも、人生はもっと自由にデザインできる。多様な企画力を駆使してその人らしい生き方を実現している先人たちを訪ね、「A面:生き方・働き方」「B面:企画のポイント」をテーマに話を聞く。

 

 

今回の企画人は、丹波市復興推進部の部長である余田一幸さん。【A面】では公務員の枠をこえて、市でつくった会計ソフトや、学生との協働プロジェクトである佐治スタジオなど、世の中に仕掛けてきた道のりを伺いました。【B面】では、「仕掛け」続けるのに必要な企画力や、災害を通してみる「感性」について迫ります。

 

※記事は【A面—生き方・働き方】と【B面―企画のポイント】の2回に分けてお届けします。本記事は【B面】です。

 

自分で獲得ゴールを描けなければ、人には伝わらない!復興プランも絵で示す

 

Q.今までさまざまなエピソードを伺いましたが、まず仕掛けるための最初の一歩として意識されていることはありますか?

 

まず、私はゴールを1枚の絵に描いてから始めます。チラシの裏でもなんでもいいから、1枚しっかり描く。これをしないと、企画書の方向性もブレますし、自分で描けないものは人には伝わりません。

 

絵というのはとても大切に思っていて、丹波市の復興プラン(※)も絵で示しました(上記写真)。復興が進んでいるところは、その復興の様子の写真を絵の隣に掲載して、きちんと計画が実行されていることがわかるように工夫しています。この方法は、住民の方はもちろん、他自治体からも好評で、同じ手法を取り入れるところも出てきています。

 

※丹波市について
平成26年8月16日から17日未明に発生した集中豪雨により、1名の尊い命が失われました。そして1,000戸を超える住家が損壊し、市島地域を中心に、道路、河川、農地、森林等に甚大な被害を受け、丹波市発足以降、経験のない大惨事となりました。
(引用元:丹波市復興プランより)

 

災害復興ではゴールに到達するためには、応急の応急でもいい!

 

Q. 災害時は、指揮をとられていたのですか?

 

はい。現地災害対策本部長代理として、いかに早く復旧するかということを考えて動いていました。1番大きいのは水道です。水道部に「1ヵ月で給水を再開してほしい」というゴールを突き付け、一緒に知恵を絞りました。工事を行い、災害前の状態を目指すと数カ月かかるとの返答だったので、「応急の応急でもいい」と考えました。

 

“応急の応急”でいいという発想で水道部は、被災した浄水場のある山間部に簡易の貯水所をつくり、そこから自然の勾配を利用して上から下へ水を流すことにしました。もちろん、給水所には車で水を運びましたがこれにより、災害後1ヵ月での給水が再開され、住民の方には大変喜んでいただけました。

 

災害対応は感性の集大成! 感性は日々の仕事から磨かれる

大きな被害が出た東皐寺の復旧状況

 

Q.応急の応急というのは、なかなか出来ない発想だとおもいますが、どうしてそういう発想ができたのでしょうか。

 

災害という緊急事態では、マニュアルなんて役に立ちません。想定外のことが数多く起きるのが災害です。そんなときに必要なのは、もう各個人の「感性」だと思います。先ほどの水道の事例も感性が生んだ「応急の応急」です。

 

Q.ほかにも余田さんの感性によって対応されたものはありますか?

災害時というのは、悲しいことに空き巣被害が多く発生します。しかし2014年の集中豪雨の際には、丹波市での空き巣被害は0件でした。これは、たまたま被災現場から帰ってきた職員の「泥に汚れていない車がいた」という違和感から始まりました。この報告を受けた私は、「泥に汚れていない車イコール泥棒」とピンときて、その日から警察に夜間パトロールを増やしてもらいました。この結果の空き巣0件だと思います。これはまさに「感性」です。

 

他にも、防災計画にはなかった情報収集班、集落担当班、土地担当班の復旧過程においての創設や、企業の協力を得ての自前の生活家電セット寄贈( 洗濯機、冷蔵庫、テレビ、炊飯器、電子レンジ、電気ポットの6点)、被災者生活再建支援金交付事業への横だし・上乗せ等など、マニュアルに頼らない現場優先の復旧を行いました。

 

また、以前は田んぼだった農地で被害が受けたところでは、田んぼに戻すのではなく、今後の丹波市での農家の継続性を考えて、大型栗園にする計画も進めています。

 
「感性」というのは緊急時だけに必要に思えるかもしれませんが、何かを仕掛けるにも、日々の仕事、生活にも欠かせないものだと私は思います。

 
Q.感性を養うにはどうしたらいいのでしょうか?

 

目の前の仕事を全力で取り組むことです。復興推進部になるまで、本当に様々な仕事をしてきたことが、今回の災害対応で発揮できた感性の源になったと思います。何一つ、無駄じゃなかった。自分のやりたいことではないもの、一見単調につまらなく思えるものの中からでも必ず身になることはあります。

おわりに

前列真ん中。劇団の脚本も書いている多彩な余田さん

 

余田さんが指揮をとられた丹波市の復興は、全国でも稀にみる短期間での復興を実現しており、「丹波を見習え」と言う言葉が各地の自治体で聞かれるほど。また元復興副大臣の方も余田さんのアグレッシブな対応が素晴らしいと賞賛しています。

 

余田さんのお話を伺い、「感性」というのは、その場、状況で必要となることに気づき、最善の選択をするここと、そしてそれは現在だけにとどまらず、未来まで見据えた最善の選択をすることではないかなと思いました。

 

余田さんの「仕掛け」のアイディアの源は、常にメモをとること。寝室、移動の車など、長時間過ごす場所にはメモを置いており、何か思いついたらすぐ書き留めるようです。実はこれ、戦時中に暗号部隊にいたお父様とまったく同じ習性だったそう。まさにDNAです。
書き留めた多数のアイディアを、状況に応じて引っ張り出し、アイディア同志を結び付けて、形にするのが得意とおっしゃっていました。

 

丹波市には余田さんがいらっしゃれば、安泰! と思いますが、実は来年の3月で定年退職を迎えます。今後はまったく違うことをしたいから、「バーのボーイがいいなぁ」と笑う余田さん。まずは趣味の釣りを楽しまれるそうですが、余田さんの次の1手も大いに気になります。またいつかインタビューの続きができることを楽しみにしています。

 

余田さんが部長を務める「丹波市復興推進部」では、豪雨被害の復興プロジェクトとして、丹波市と民間団体等の協働で「復興まちづくり事業」を行っていますので、ぜひご参加ください。(H29年度のまちづくり事業の詳細はこちらから)

この記事の筆者

yoko koga

こが ようこ

IT企業にてSE、営業として働き妊娠を機に退社。地域でママ向けのイベント・講座を行う団体の代表をしている。 住んでる地域を楽しいところにしたい!という活動を展開中。好きな言葉は「なんとかなる」、子育てモットーは「死ぬこと以外はかすり傷」。