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2016.05.31

【企画人:B面】藤沢宏光さん(「ミサキプレッソ」「ミサキドーナツ」オーナー/音楽プロデューサー)/基本が何かを考えて、予定調和じゃないものを放り込む。抜け道?を探すテクニック

 

【インタビュー「企画人」 】
「企画人」は自由だ。働き方も自由だ。理想と現実のギャップを埋めるチカラ、「企画力」があれば、仕事も、はたらきカタも、プライベートも、人生はもっと自由にデザインできる。多様な企画力を駆使してその人らしい生き方を実現している先人たちを訪ね、「A面:生き方・働き方」「B面:企画のポイント」をテーマに話を聞く。

 

藤沢宏光さん

 

今回の「企画人」は、神奈川県三浦市にあるカフェ「ミサキプレッソ」とドーナッツ店「ミサキドーナツ」のオーナーであり、音楽プロデューサーの藤沢宏光さん。10代から音楽制作やマネジメント、アーティストのプロデュースを手がけてきた藤沢さん。 テクノミュージックの御大、YMOが散開した1983年から13年間、高橋幸宏さんのマネージャーも務め、その後、THE BOOMの宮沢和史さんや小野リサさんなど、数々のアーティストのプロデュースもしてきました。そんな藤沢さんが現在、音楽業界と距離をとり、神奈川県の“消滅可能性都市”三浦市でカフェやドーナツ店を手がけるようになったワケを伺います。
 
 

※記事は【A面—生き方・働き方】と【B面—企画のポイント】の2回に分けてお届けします。本記事は【B面】です。

 

ダメなところをいくらつついても、短期間では結果がでない

藤沢宏光さん

神奈川県三浦半島の最先端・三崎にある『ミサキプレッソ』にはさまざまなミュージシャンが通っているという。

 

Q.【A面】では、豊富なキャリアがありながら、全く違う業界で挑戦を始められた藤沢さんのご経歴を伺いました。そうしたプロデュースの根本にあるものを伺えますか?

 

プロデューサーをしていた頃は、音楽の制作現場だけでなく、アーティスト全体のプロデュースをしていました。ライブの舞台演出からステージ衣装まで、なんでもやりましたね。すべて、キャリアのスタート時から“できることは、なんでもやる”その積み重ねです。

 

プロデューサーには、自分のプロデューススタイルに作品をはめていくタイプと、そのアーティストの最も魅力的なところを際立たせるタイプがあると思いますが、ぼくは後者かな。プロデューサーの使命として短期間で結果を出さなきゃいけない。そういうときにダメなところをいくらつついても上手くいかないと思います。その人の魅力がどこにあるのかを見極めて、魅力的なところをどうやって伸ばすべきかを考える

 

小野リサさんの場合は、ボサノバミュージシャンである彼女とギターとの相性を考えて、常にギターを抱えているようにしました。それこそ『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演したときもずっとギターと一緒でしたね。もちろんライブでもギターを常に抱えていました。

 

世界を広げる努力が人を見抜く力になる

藤沢宏光さん

 

Q.では、「魅力」を見抜くにはどうしたらよいのでしょう?

 

「いろいろな、世界がある」ということを知ること。

 

まずなんでもやってみるべきで、未知の分野にどんどん挑戦しちゃう。僕は若い頃から無駄なことも含めて、いろいろ見て来た。その中で、「こんな世界もあるのか・・・・・・」「こんなやり方もあるのか・・・・・・」と。

 

そうしたそれぞれの体験が生きていると思います。常に新しい世界を知りたいと、どこにでも顔を出した。

 

20代の頃は、著名なミュージシャンや世界的なデザイナーやクリエイターたちがよなよな集まる隠れ家的なbarの噂を聞いたら、そこに潜り込んで飲んでみた。無謀な日々だったけれど、毎日が刺激的だった

 

今の若い人は、そうした“世界を広げる努力をしているか?”、背伸びをしないで、いつも居心地の良い場所で安穏としているのではないか?

 

企画は「全部、当てる!」つもりでやっている。基本の反対から抜け道を探す

藤沢宏光さん

 

Q.音楽プロデューサーから飲食店のオーナーは、たしかに新しい世界ですね。

 

三浦市は“消滅可能性都市”と言われいます。正規雇用も少なくて、若い人も減っているこの街をなんとか盛り上げたいという思いでやっています。『かもめ児童合唱団』のプロデュースもその一環。ただ、それぞれの分野でキャリアを積んだ技術は、別の業界に行っても使えるんですよね。どんな分野であっても。僕は音楽業界で学んだものだけで、今、飲食という新しい分野に挑戦しています。

 

「ミサキドーナツ」、2013年に三崎本店がオープンしました。この三崎銀座商店街をなんとか盛り立てたい「ミサキプレッソ」の藤沢が、この町で新たにプロデュースするとしたら、なに? 既存の店舗とのバッティングは避けたい。

 

2013年12月、ミサキドーナツのオープン初日には行列ができて、ボロボロと涙が溢れてきて挨拶も出来なかった。全力で取り組んできたこともあるけれど、この新しい試みに集まったスタッフそれぞれの夢や希望が含まれているから

 

現在ミサキドーナツは逗子店鎌倉店、3月にオープンしたばかりの港南台バーズ店すべて手作りの「気持ちのこもった、ドーナツ」を提供しています。

 

「気持ち」とは、まず美味しいものを、という作り手の心

 

そして、地元三崎を少しでも良い町にとの願い

 

スタッフひとりひとりが将来に夢を持てるように。

 

そんな「気持ち」がこもっています。

 

Q.壁にぶつかったときにはどうしていますか?

 

「ミサキドーナツ」は、ただドーナツを売るのではなくてストーリーが大事だと考えました。

 

元々50年間も続いた三崎のシンボルのような時計店の物件をリノベーションして始めましたので、「昭和の時代に繁栄の極みのような日々を経て、この町を支えてきた場所」ということを胸に刻んで、今、僕たちが使わせていただいてるということもストーリー。ほとんどがお年寄りで、僅かな子どもたちとともに楽しんでもらえるお店でありたい、というストーリー。

 

新しいことを始めているようであっても、すべては「過ぎ去った過去の上にある」ということ。三崎という過疎の町の苦しさを打開したいという願いが込められています

 

壁にぶつかったときは、スタートの時点の気持ちに戻ることが重要だと思います。あと、斬新なデザイン性も重要ですね。古い町でいかにも古めかしい印象のものは、馴染みやすいかも知れないけれど、未来がない。ミサキドーナツはポスターをエロ漫画界の巨匠、山本直樹さんに書いてもらっています(笑)

 

Q.失敗を恐れてリスク回避に目がいったりしないのでしょうか?

 

そもそも「失敗する企画はたてない」ようにしています。全部当てるつもりでやっています。その中で企画がスタートした段階の柔らかいときには、なるべく発想を広げてスタッフから奇抜なアイディアを募っていき、徐々に絞り込んでいくことで形ができる。残念なのは、僕が一番斬新だということかな。

 

あとは運営していく中で、予定調和ではない異質な要素を加えていくことですね。もちろん様式美の重要性もありますが、なにが新しいか?を考えます。

 

エロ漫画界の巨匠、山本直樹さんの画を使うことや、鎌倉店では錆びた鉄骨のオブジェを中心に据えたりしています。

 

どうしても「垢抜けない場所」への出店も今後積極的に考えてゆく予定です。一般的に「厳しい」場面に挑戦することも意義のあることだと思います。

 

結局『かもめ児童合唱団』も、三崎という過疎の都市からメッセージを投げかけることで、音楽業界や社会全体に疑義を投げかけているわけです。いまは、一個人的な内容をテーマにした音楽があふれていますが、音楽カルチャーは社会と無縁ではありません。無垢な子どもたちが、現代の社会を歌うことである種のメッセージを投げかけています。

 

音楽でたくさんの人たちと常に共鳴したいと思います。

 

おわりに

 

さも当たり前のように話していただいたキャリアですが、その壮絶なご経歴に関してはずっと聞いていたいようなエピソードばかりでした。ニコニコと過去から現在に至るお話をされる藤沢さんの根本にふれ、それを作り上げたのはひとえにその人柄にあるのだなぁと感じました。

 

そしてその穏やかな人柄の裏にある反骨精神。当たり前を疑い、基本的な部分になにか別の要素・・・・・・反対側から考えて、それを試してみよう!という姿勢に「ロックな企画者としての流儀」が垣間見えました。

 

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この記事の筆者

Satoshi Kurosaki

Satoshi Kurosaki

情報系ウェブメディアやカルチャー系出版社などで技術職・編集職を経験した後、独立。現在は、フリーの編集者・ライターとして活動する。音楽や文芸などのサブカルチャーやITを専門としつつ、ライフスタイル系にも手を伸ばしたいと思っている30代男性。