「越境人」の連載…
以前、「越境人」の連載でご紹介した、岩手と東京という場所をこえて、さらにIT~木材店、まちづくりと業種のボーダーをこえて活躍する小友さん。スターティアグループにて、電子ブック作成ソフトActiBookや、配り終わった紙媒体の効果測定するAR技術COCOARを「プログラミングのプの字も知らなかった集団でも、お客様の気持ちや世の中の動向、そして本当にこれを成し遂げるんだという想い」で、日本一にされています。『日本一をつくる再現性』というのを体感していると話していた小友さんに、その企画術を伺いました。
キーワードは、孟子の言葉「天の時、地の利、人の和」です。
(引用元:Gartner ハイプ・サイクルより)
Q.色々な事業を立ち上げられている小友さんが、事業立ち上げの際に大事にしていることはなんですか?
まず尖ること、最初の10人を熱狂させることなど、いろいろありますが、孟子の言葉の「天・地・人」(天の時、地の利、人の和)を満たしていることが私の中でフレームワークになっています。
まず天の時ですが、これは、「タイミング」。早すぎず、遅すぎずというのは新しい事業を取り組むうえで大事なことです。ITの事業では、Gartner社が出している「ハイプ・サイクル」(上記グラフ)で考えています。これはハイテク商材の描く期待値になっています。
ハイプ・サイクル上では今どこにどういうことが起こっているか?を見極めて、自分たちは期待値がMAXになる前、つまり市場が盛り上がっているところ(上のグラフで言う、「過度な期待のピーク期」の前)に対して進出します。そして幻滅期に着実に実益を貯めていきます。これを商材ごとにマッピングして、どのタイミングでやるか?を考えています。
Q.木材店ではどうですか?
木材店の方は、この概念が当てはまらないので、建築業界を1つのベンチマークにしています。建築業界の最先端で起きている変化が何年後かの木材業界に応用できると思っています。例えば、最先端の建築業界では昔なら足場を組んでいたものを今はドローンをつかって重量のあるものを運ぶという実証実験をしています。それを木材の現場では、山から集材してくるところに応用できるよねと。そしてドローンが重量のあるものを確実に制御できるという技術が、ある程度確立した時点ですぐに木材業に活かせます。なので、ベンチマーク対象を見つけてその業界動向を注視しています。
ITや木材のように自分の業界なりのタイミングの測り方というのはあると思います。どこを見るべきなのか?というのは、経営者の1つの重要な指標だと思います。
Q.次の「地の利」はどうですか?
地の利は自分たちの「立ち位置」です。つまり、「自分たちがどういう認知をされているのか?」や「どういうポジショニングを取ると今後有利なのか?」を見極めるということです。
スターティアラボが独立した際に、社長がお客様を回って「なんで当社を選んでいただけたのですか?」という有名な質問をして回りました。そのときに我々に期待されていたのは、クリエイティブ業界の武器庫になることでした。業界の人たちがクリエイティブなものをつくる自信はあるが、ITを使っての提案が苦手だったので、その際の武器を提案することが望まれていると気づきました。
独立した当時は、電子ブックしか自社開発していませんでしたが、次の武器になりそうなもので、先ほどのハイプ・サイクルの期待値がMAXに向かっているものとして、ARに注目しました。その当時ARは、大手の印刷会社や広告会社が大きな資金力で開発していたので、もっとシンプルにもっと手軽に、そして機能は少ないけど導入しやすくなるようにと生み出したのが「COCOAR」です。これはとても喜ばれました。
木材店での我々の立ち位置は、110年続く老舗で、広葉樹の専門店。これは岩手県では大変珍しく、商圏が重なる競合はいません。そうすると、木材業界のリーダー足り得る立ち位置で、我々が実績を出したものを他の木材店に展開しても競合しない。そこで、我々が木材業界の実験台というか、ファーストペンギンになって、それを木材業界へ展開していくことが使命だと考えています。
木材の事業では自分たちの企業規模を拡大していく気はなく、我々と志を一緒にする人達が全国、そして全世界に広がっていけばいいので、今後は仲間を増やしていこうと思っています。
Q.「人の和」はどうですか?
最後に人の和は「誰とやるのか?」です。「ビジョナリーカンパニー2」という本がありますが、ここで「誰をバスに乗せるか?最初に人を選び、その後に目標を選ぶ」とあります。つまり、何をやるか決める前に誰とやるかを決めて、その人に何を任せるかを決めるということです。私はこれを信じています。スターティアラボの独立時にも誰とやるかをベースに人員配置、採用、任せる事業を決めました。
木材店でも以前森林組合にいた平野というメンバーが、今は一緒に働いてくれているからこそできることがあります。例えば、世界では7千台も使われているのに、日本ではまだ20台くらいしかない、ShopBotという木材の加工機械があります。これを使うと、依頼が来た2日後に加工した製品を納品できるというスピードを実現できます。
ShopBotで2日後に出来上がった製品
今回の小友さんの企画術。孟子の言葉に沿って、実際に小友さん自身が体験したことを具体例として交えながらお話ししていたただきました。5年以内に日本一になる再現性があるから、「2019年までに日本一ITを活用した木材店になる!」という目標も、5年あれば絶対なれると思えるそうです。
そしてお話しされていたのが、「みなさんやれるんですよ」ということ。「自転車が乗れる前まで自分が自転車に乗っている姿って想像しづらいけど、世の中のみんなが乗れているから乗れるだろうなという感覚が持てます。でも日本一のサービスをつくるというのは、やっている人が少ないので、みんなやれないと思っているだけで、実はやったらいける」とおっしゃっていたのが、印象的でした。
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