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2020年6月19日

発酵人 田上 彩さんが抱いた「消費だけする生活」に違和感 ― 私たちの日常生活が脆弱なことに気付いた出来事とは

スーパーで食料品を買い、家に帰って調理して摂取する。そんな生活に何の疑問も持たないという人も多いと思います。私たちの生活のほとんどはスーパーや量販店で販売されるもので成り立っており、そこに違和感を持つ人はほとんどいないでしょう。しかし、実はその生活を変えていかなければならない日が来るのかもしれない。


そんな風に感じたのは、モデルであり、元ミスユニバースファイナリストという華やかな経歴を持つ醗酵人 田上 彩(たうえ あや)さんの話を聞いた後でした。たしかに消費するだけの日々は全くサステナブルではありません。田上さんの話を聞いていると、何気ない私たちの生活は実はとても脆いものなのではないかと考えさせられます。


自身で畑をやりながら発酵のワークショップなども展開する田上さん。今回Planners Laboでは、自分でイチから野菜をつくるというサステナブルかつラグジュアリーな田上さんの取り組みについてお話をうかがいました。


きっかけ:3.11で大量消費の生活の脆弱さに気付いた




―田上さんといえば「発酵」ですが、いまはいろんなお仕事をされていますよね。


田上:そうですね、発酵のワークショップをしたり、発酵食品を扱うご飯屋さんで働いたりしていますが、7年~8年前から畑にも興味をもつようになって、畑仕事もやっています。


―畑ってちょっと意外ですね。畑をやろうと思ったきっかけは何だったのですか?


田上:アパレルの仕事をしていたときに、「大量消費の生活ってどうなんだろう?」って疑問がわいてきたんですよね。


そんなときに千葉にある酒蔵の方が書いている「発酵道」という本を読んだんです。日本酒って無駄なものを削りに削ってスッキリしたお酒にするのが流行っていたのですが、そこの当主さんが腸の病気になってしまったのをきっかけに玄米酒を作ることに人生を賭けて、情熱的に過ごしているのを知って感銘を受けました。一方でわたしはなんとなく働いていて、何をしているんだろう?私は、本当は何がしたいんだろう?って自分の人生に悩んでいたんですよね。


3.11の東日本大震災が人生を考えるきっかけとなりました。私は神奈川に住んでいたので、計画停電があったり、スーパーでモノがなくなったりして、自分たちの生活ってすごく弱いなって感じたんですよね。自分たちは消費するだけの立場で、何も作れないんだな、ということをひしひしと感じました。


消費するだけの立場だと、たとえばレタスが1万円で売っていたとしても、どうしてもレタスがほしければその価格で買わなければならないんですよね。それってなんだかすごく弱いなと思ったんです。なので、ただ消費するだけでなく、とりあえずゼロからイチを生み出せるようになりたいなって思って畑をはじめました。3年くらいはアパレルをやりながら、休みの日は農業をやるっていう生活をしていましたね。


はじめかた:最初はとにかく「教えてもらう」ことだらけだった




―畑をはじめるのはかなりハードルが高かったのではないでしょうか。どうやって畑をはじめたのですか?


田上:畑を始めた当時ってモデルやアパレルの仕事をしていたので、畑のやり方が本当に何もわからなかったんです。自分で種を買ってきて、Googleで調べて、それを見ながら種をまく、というところから始めました。


自分でやってみないとわからなかったので、とりあえずそこからスタートしましたね。でも、植物が病気になってしまったり、うまく育たなかったりしました。そういう情報ってなかなかネットにも載っていなくて「これ、どうしたらいいんだろう?」っていうのが何もわからなかったんです。


なので、地元の農家さんのところへ行ってお手伝いしながらいろいろと教えてもらいました。ただ教えてもらうためだけに時間を取ってもらうのは申し訳なかったので、お手伝いさせてもらいながら身に着ける感じでした。神奈川って脱サラしてオーガニック農家さんになった人も多くて、すごく親切に教えてくれましたね。


―行動力がすごいですね!


田上:なんだかもうスイッチが入っちゃいましたね。居ても立っても居られないというか、もういますぐ畑をやりたい!っていう衝動に駆られてしまいました。


つづけかた:フードトラックで実現したい世界




―いま、田上さんはフードトラックを運営していますよね?


田上:森 星(もり ひかり)ちゃんといっしょにフードトラック「miss eden(ミス エデン)」を運営しています。発酵食品を取り扱うご飯屋さんで働かせてもらっていて、自分でもアウトプットをしたいと思ってフードトラックという形になりました。


―食にこだわりがあるお二人が運営するフードトラックなので、「miss eden(ミス エデン)」で出す食材へのこだわりもあるのではないでしょうか。


田上:"farm to table(新鮮でオーガニックな食材を、農場から食卓へ)”をテーマに、自家製の発酵食品、土に戻る容器などを使用し、お腹にも環境にも優しい食を提供しています。 100人いれば100通りの農家さんがいるので、農家さんと食卓をつなげる掛け橋になりたいと思っています。


―そういう縁でつながるのっていいですね。畑仕事で大変だったことは何ですか?


田上:とにかく夏の畑仕事は大変でした。無農薬なので、もう1週間放っておいたら雑草が背丈くらいまで伸びるんです。手でむしるか、手で持つタイプの草刈り機を使うしかないので本当に大変でしたね。朝もすでに暑いし、夕方になると蚊も出るし、もう大変だなって思いました。


でも、そういう大変さがある一方で最高だなって思う瞬間はたくさんありました。 今まで自分がゼロから野菜を育てることがなかったので、「レタスの種ってこんなに細長いんだ」 「にんじんの種ってこんなにふわふわしているんだ」 という感じですべてが新鮮でしたし、そういう小さな種のところから育っていく様子を見ることで「本当に生命をいただいているんだな」っていうのを肌で感じましたね。


こんなに小さな種なのに、太陽の恵みと土のエネルギーで大きくなって実になるんだなっていう、その循環がいとおしすぎました。そして、そのいとおしいものをどういうふうに体に取り込みたいかなって考えたときにいわば生きている菌を体に取り入れる「発酵」を活用してみようという発想に至って、いろいろと勉強したんです。 育てるところを見て、生命の循環を感じられるっていうのは、畑をやった中で一番大きな学びでしたね。


都市で生活している友達が畑に遊びにきてくれて、種を一緒にすると、そういう時間を共有すると自然の豊かさを感じてみんなで幸せな気持ちになれるというのもあります。雨あがりの土のにおいとか太陽のにおいが混じったようなにおいをかぐともう本当に幸せな気分になりますね。


―いいですね。ただ都会で生活する人がいきなり畑を持つのって難しいですよね。そういう人が自然の恵みや循環を感じるにはどうしたらいいでしょうか。


田上:ちょっとしたプランターに育てやすい野菜を植えるっていうだけでもいいと思います。土と太陽があれば植物は意外と育ちます。都会は意外と虫が少ないので無農薬で育てやすいんですよ。葉物野菜も結構育ちます。できる範囲でぜひやってみてください。


生命を感じながら生活するということ

モデルで元ミスユニバースのファイナリストという華々しい経歴を持つ田上さんですが、非常に屈託なく楽しそうに畑のことを教えてくれました。いまの新型コロナウイルス騒動のときにもスーパーから相次いでモノがなくなったり、一部の商品が異常なほどの高値で取引されたりと私たちの生活の脆弱性を感じたとも言っていました。田上さんの言う通り、もう「消費するだけの生活」は終わりにしなければならないのかもしれませんね。


今後、田上さんが取り組んでいる「発酵」のことを詳しくご紹介したいと思います。


My First Action


・自分の消費活動について一度振り返ってみる
・何もわからなくても、とにかく行動に移してみる
・畑がなくても、命を感じるためにベランダで植物を栽培してみる



ディレクター、クリエイター、コミュニケーターの顔を持つ、 「サステナブルラグジュアリー」な価値をつくるクリエイティブコミュニティ。 あらゆる組織、チームの人たちと、柔軟にプロジェクトを組み、価値をつくっていきます。

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