About Contact
2020年10月28日

クリエイティブに問題解決する車田篤さんに聞く。飲食店ならではの方法で実施している食品ロス削減アクションとは?

日本でも大きな問題の1つとなっている、食品ロス。
家庭でも使いきれず廃棄してしまう食材があったり、食べきれず処分することになってしまう食材があったり、という経験がある方も沢山いらっしゃるかと思います。 インパクトが大きい、飲食業界での食品ロスも重視されています。

今回は、原宿、代々木エリアを中心に、日本中でカフェやレストランのの運営、プロデュースを手がけている、車田 篤(くるまた あつし)さんのインタビュー、第二弾。
クリエイティブなアイデアで課題解決している車田さん@atsushi_kurumata に、飲食店としての食品ロス削減アクションや、プライベートで心がけていることなどを伺いました。

食材へのこだわりや、生産者やお客様との関係の築き方について伺った第一弾
▶︎人気飲食店を数多く運営、プロデュースする車田篤さんに聞く。生産者やお客様とのサステナブルな関係の築き方とは?

「まだ食べられるものを捨てるのはもったいない」から生まれた、お客様に喜んでもらえるプロジェクト

ーThe Little BAKERY Tokyoの廃棄パン販売、「DAY OLD BREAD」が大好評ですね!はじめたきっかけを教えてください。

車田:もともとThe Little BAKERY Tokyoを始める前から、「パン屋さんで余ったパンはどうなるんだろう?」という素朴な疑問がありました。

もちろん予測を立てて作るけれど、急な天候の変化で大雨になって、お客様の数が減ってしまったり、営業時間内に一度売り切れて、追加で作った商品を売り切ることができなかったりと、どうしても廃棄が出てしまうときがあります。
スタッフが持ち帰ったり、近所に配ったりしていたのですが、やはりそれにも限界があって。

売れ残ってしまったパンでも、普通に食べておいしいんです。
まとめ買いしてくれたお客様は、夕方に買ったものを次の日に食べたり、冷凍して後日食べたりすることもあるはずなので、食べる分には問題ない。まだ食べられるものを捨ててしまうのはもったいないなと思いました。

どうしようかな…と考えていたときに、スーパーで閉店間際にやっている半額セールを思い出したんです。
前日のパンを低価格で販売するアイデアはそこから生まれました。

同業者の方からは「前日焼いたのパンを売るなんて信じられない!」と思われることもあるのですが、僕らとしては、おいしいものは食べてもらいたい。
価格を半額に下げても、買ってもらえないなら需要がないということだけど、買ってもらえるという事実が需要があることの証明だと思うんです。

あとは、食品ロスだけでなく、世界に目を向けて飢餓問題などを考えると、やはり廃棄はできないなと。
日本は食事に関しては豊かな先進国なので、安全で新鮮なものが常時食べられる環境ですが、世界中でそういう状況じゃない人たちが沢山いて苦しんでいるのは、色んなところで見聞きすること。

「食」に携わって仕事をしている身として、食べ物を大切にする気持ちを強く持ち続けたい。 そんな思いもあって、DAY OLD BREADを始めました。

ー売り切れになってしまうほど人気なThe Little Bakery。他の人気店では、売り切れた時点で閉店時間を早めるという戦略もあるかと思いますが、検討されたことはありますが?

車田:売り切れることによって価値を見出しているお店も沢山あると思いますが、僕たちはせっかく来てくれたお客様に商品を楽しんでほしいので、全商品が売り切れの状態はなるべく作りたくないと思っています。

パンは基本的に、全て朝焼いています。でも製造のキャパシティーもあるので、ずっと店頭に商品が並んでいる状態を作るのはなかなか難しいこともあります。 閉店間際になって、どうしても品切れになってしまうこともあるのですが、ある程度の種類を並べて、選んでもらえる状況を作ることを目標にしていますね。

もちろん無限に作れるわけではないですが、まだ作れるのに、あえて作らずに売り切れでごめんねっていうのは、大袈裟に言うと、店まで足を運んでくれたお客さんたちに対する裏切り行為になってしまうんじゃないかと。

東京って数えきれない程のお店がある中で、限られた時間の中で、僕らの店を選んできてくれたお客さんの期待には出来る限り応えたい。なるべくみんなが同じ状況の中で選べる環境を提供したいんです。
でも、それを続けると、副作用として、売れ残りが出てしまいます。それを捨ててしまうのは廃棄になってしまうし、喜んでくれているヒトがいるなら販売しよう、という流れから今のプロジェクトが生まれています。

ー「DAY OLD BREAD」はどのように名付けられたんですか?

車田:実は、LAの焼き菓子屋さんにいったときにそういうコーナーがあって。
そのときのことが、何となく頭の片隅にあって、参考にさせてもらいました。

誤解がないように、前日のパンだということがきちんと表記できるし、日本語で「前日のパンですよ」と書くよりは、おしゃれですし、ポップでいいのかなと思ってつけました。

ーパッケージもかわいらしく、素敵ですよね!

車田:ありがとうございます。
もともと2017年末頃から店頭販売していたのですが、今は通販のみで販売しています。 はじめは両方で販売しようと思っていたのですが、今は店頭分が確保できないほど、通販でのオーダーが入るようになりました。
その日の廃棄パンの数にもよるので、日々限られた数の販売になりますが、ほぼ100%消化している状況です。

パッケージは、届いたときに「わーっ!」という驚きや喜びも届けたいと思って、それを形にしてみました。どんな商品づくりも、プロジェクトも「お客さんに喜んでもらいたい!」という気持ちが根底にあります。

ー大人気のDAY OLD BREADですが、どのように拡散されたのでしょうか?

車田:店頭でポスターを貼ったり、SNSで数回投稿はしましたが、元々積極的にPRはしていませんでした。店頭に足を運んでくださる皆さんの口コミで広がったのが大きかったと思います。

ー続いては、食品ロスについて詳しく伺いたいと思います。食品ロスを出さないように、お店で工夫していることはありますか?


車田:食に携わっている以上、「食品ロスを無くすこと」を常に心がけているので、従業員にも口酸っぱく共有しています。 具体的なアクションとしては、DAY OLD BREADの他に、食品ロスを出にくくするメニューを提供しています。

例えば、1種類の食材を1つのメニューだけに使うと、オーダーが入るか、入らないで影響が出て、食品ロスが出てしまうので、複数のメニューに同じ素材を活かすようなメニュー作りをしています。
色んなメニューに使うことによって、オーダーに左右されず食材を使い切ることができるので、工夫しながらやっています。

他にも、二次加工でフレンチトーストを作るときに、揚げるときに形が少し崩れてしまって販売できないドーナツを活用したりしています。これがまた、おいしくてSNSでも「「こんなフレンチトースト初めて食べた!」と好評なんです。

一人ひとりができる食品ロス削減アクション:食に対する知識を増やしていくこと、体験すること

ー食品ロスを加工して二次利用するアイデアもあるんですね。
今までは、飲食店としての立ち位置で実施されていることについて伺いましたが、私たち個人がが食品ロスを削減していくためには、どんなことに取り組むべきだと思いますか?


車田:個人的に思っているのは、自分も含めて、一人一人が使い方や食べ方など「食に対する知識を増やしていく」ことの大切さ。
これは学校でみんなに教えて方がいいんじゃないかな?と思うくらい、重要だと思っています。

賞味期限が切れた=食べられないと思っている方って結構多いですよね。
でも、そうじゃない。日本の賞味期限のつけ方って、かなり厳しいというか、リスクをだいぶ考慮した上で決められていると思います。

食べても大丈夫かどうか判断が自分で出来ないから、賞味期限の数字に頼ってしまっている。DAY OLD BREADを知って「昨日までのもの食べて大丈夫なの!?とびっくりされる方も、未だに沢山いらっしゃいます。
生ものなど、食材によってはお腹壊してしまうものもあるかもしれないけど、ちょっとくらいなら大丈夫なものも沢山ある。
それを見極める力を、自分も含めて、みんなが持ったら、もっとロスがなくなるだろうなと思う。

賞味期限はあくまで、おいしくたべられる期限の目安。 それを理解した上で、無駄が出ないように、必要な分だけ買うことも大切。
一人ひとりが意識を変えるだけで、食品ロスは大分減ると思います。

ー賞味期限に関してなど、「食に対する知識を増やしていくこと」が大事とのことですが、車田さんご自身は、どうやって学ばれましたか?

車田:僕の場合は、子供の頃から、もともと賞味期限=この期限を過ぎたら食べちゃいけないではない、ということを分かっていた気がします。
家族がそうだったので、やはり育ってきた家庭環境も関わってくるのかも。 親が知識を持っていて、子供との会話の中で伝えていけたら自然と分かってくるだろうし、逆にすごく神経質で「賞味期限切れたものはだめだよ!」という教えのもとで育つと、そんな考えになると思います。

健康を守る上では、大切な数字ではあるけれど、ストイックに考えなくてもいいのかなと。
僕も、仕事上はお客さんに提供する食べ物なので、もちろん賞味期限に気をつけていますが、プライベートでは自分で選んで食べています。

知識を増やしていくには、体験あるのみ!食材にたくさん触れて、自分で料理して、食べる。これを繰り返していくと、自然と身に付いていくことなんじゃないかと思います。僕もそうやって学んできました。

「食」って、誰にとっても欠かせない、大切なもの。 色んな人に楽しみながら学んでいってもらえたら嬉しいなと思います。

ー今後の未来に向けてチャレンジしたいと思っていることや、課題だと思っていることがあれば教えてください。



車田:いま、新型コロナウイルスの影響を会社としても、お店としてもかなり受けている状況なので、まずはそこを乗り越えなきゃいけないなと思っています。

会社でも色んなアイデアを出していて、その中で出てきたのが、地方発送。廃棄パンだけでなく、焼きたてパンの発送も開始したんですが、販売スタートしてから1分以内で完売するくらいの大盛況で、沢山ご注文をいただいています。
コロナ禍で来てくれるお客さんが少なくなっている。それならば、こちらからアプローチしていこうと。

今までも通販は構想としてあったのですが、お店に沢山の方が来てくださっていたし、準備にリソースもかかってしまうし、需要がないかもという不安もあって、なかなか手を出せていなかったんです。
この状況で、後回しにしていたことが一気に加速しました。

ありがたいことに全国にお店のことを知ってくれているヒト、来たことがある方が沢山いるので、そういう方にお届けして、ご自宅で楽しんでいただけるサービスを工夫しながら増やしていきたいなと思っているところです。
実際喜んでもらえることが分かった以上は、今だけのことに終わらせず、継続的に広くやっていきたいと思っています。

おわりに

食品廃棄は出てしまう状況や、コロナ禍で影響を受けても諦めず、クリエイティブなアイデアで問題解決をしている車田さん。
車田さんや、スタッフの皆さんの中にある「お客さまに喜んでほしい」という強い気持ちが、様々なアイデアを生み出しているのだと感じました。

また賞味期限についてのお話も印象的でした。
「食」について学ぶことは誰にでも簡単にできること。
おうち時間も増えてきたこの機会をいかして、楽しみながら「食材にたくさん触れて、自分で料理して、食べる」という体験を通して、食品ロス削減について考えてみませんか?

--------------------
9月1日から始まった国連WFPの「ゼロハンガーチャレンジ 食品ロス✖️飢餓ゼロ」。

「食品ロスゼロアクション」をSNSに投稿する(※)と1投稿につき120円(約4人分)の給食支援が行われます。 皆さんもぜひご参加ください。

※3つのタグ「#食品ロスゼロアクション」「#ゼロハンガー 2020」「#国連WFP」をつけてInstagram、Twitter、Facebook、YouTubeに投稿。

▶︎ゼロハンガーチャレンジ 食品ロス✖️飢餓ゼロ


車田 篤(くるまた あつし) @atsushi_kurumata
LDFS/GUIDING LIGHT 代表取締役

21歳で上京し様々な飲食店で経験を積む。 24歳の時に独立開業し現在は東京・原宿の「THE GREAT BURGER」を核に東京を代表するアメリカン業態の飲食店など様々な飲食店のオーナーシェフ。 メニュー開発はもちろん店舗デザイン、インテリア、グラフィックデザイン、撮影など全てを自ら手がけている。


ライター 小池彩乃
学生時代にニュージーランド、ノルウェーでの留学を経験。サステイナブルに興味を持つ。早稲田大学卒業後、外資系通販企業にてEC企画・マーケティングを経験。いまは株式会社アイクリエイトにてPR、SNS運営、ライター業務などを担当している。