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2021年2月22日

FSC認証木材の価値を守る &CRAFTS 山本瑞穂さんのブランド作りのきっかけ

木材の価値と新しい視点を提供する

山梨県のFSC認証(FSC:Forest Stewardship Council/森林管理協議会の認証)の木材を利用して雑貨を販売している&CRAFTSの山本瑞穂さん(@andcrafts_ )。その温かみを感じるデザインから、多くの方や企業からもお声かけがあるそう。

山梨県は国内でも珍しく県有林にFSC認証を取得されています。その中で、山本さんが&CRAFTSを始めることとなったきっかけは、大切な木材の価値を守るため、環境に良いものが当たり前になることを目指して、でした。

そんな山本さんに、ヒストリーや思いをお伺いしました。

木材の良さに気づいて欲しい

ー&CRAFTSを始めるきっかけを教えてください。

山本:もともと母の実家が製材屋だったんです。その製材屋では、建材に使用する壁や床、家具に使用する材を丸太から引いて造っています。

製材は、基本的に4mで在庫を用意します。すると3mの注文があった時に1m切り落とさなければなりません。すると1m残るじゃないですか。その1mは建材には不向きになるので使用できず、チップ工場で加工して紙の原料やバイオマス燃料にしていました。

ーえ、壁や床に使えるような良い木材をバイオマス利用??

山本:はい、そうなんです。せっかく良い価値をもつ材なのに活用方法がなくて、チップに加工するのです。そうすると、チップ用材と同じ相場で取引されてしまいます。でも本来は家の内装に使われるような良いものが、紙の素材になってしまった時に誰がその良さに気づくんだろう?と思ったんです。

たしかにバイオマスは電力に還元されるので魅力的、でも燃やされたらそれでおしまい。製紙も紙になった時にそれがいい素材であることに気付いてもらえない。それはそれで淋しいですよね。

じゃあそこに少し手をかけて、品質を保ったまま適切な価格、正しい価値で市場に出すことを考えました。そこで、若い感覚で、デザイン性や新しい文化に根付くような木製品の開発に挑戦してみようと思ったのが今に繋がっています。

ーそうだったんですね。その思いを抱き、おひとりで立ち上げられたんですか?

山本:最初は、母が自身の実家である製材屋を辞め、箸などのFSC認証製品の製造会社を立ち上げたので、その中で企業向けノベルティやOEMなどの企画提案を担当していました。ノベルティ業界は、できるだけ安く、できるだけ大量に製造する事が求められ、プラスチック製のものが大半を占めます。更にクライアント自身も自然素材を取り扱った経験が浅く、価格や性質など木製品に対するネガティブな意見が想像以上に多くショックを受けました。そんな時にだんだん自分達でエンドユーザーに良さを伝える側に立ちたい!

「木製品=高くてメンテナンスがめんどくさい」という価値観を脱却して欲しいという思いが強くなり”アンドクラフト”を立ち上げました。

そこに加えて、時代に合った新しいFSC認証のサステナブルな木製品を目指しました。というのも、ちょっと前までは「環境にいいもの」や「木製品」は私達の年代からみるとちょっとダサいと思われていた。そういった製品はどちらかというと年齢層が上の人たち向けでしたよね?

ー確かに、木彫りや木製品は両親や祖父母が持つようなイメージもありました… 山本:でも、もっと若い人にも身近に感じて欲しかったんです。そのためにはサステナブルや環境問題に関心のある若者たちが日々のライフスタイルに取り入れやすいものが必要。気づいたらいいものがそこにあるもの、気づいたら身につけてているもの、みたいな社会を目指すのなら、あまりにも次元の違うものをやっていたら理想の未来がやってこないと思うんです。

ひと手間加える、で生まれる新しい価値

できるだけ自分で手を加えて作ってみる、メンテナンスしてみるというところに密着させた製品作りを目指して、アンドクラフト=「ひと手間加える」な形で、新しい木製品のあり方の提供を目指しました。 なんでもかんでも完成品で、洗練されたデザインだけが全てじゃなくて、自分で手を加えることによって付加価値を付け加える、そんな思いを込めています。

ーそんな意味が名前に込められていたんですね!!でも確かに、&CRAFTSさんのミニスプーンのような、お子様と一緒に作る、みたいな流れが新しくて目を引きました。

山本:ありがとうございます。それもまたひとつ価値観を変えたいという思いがあって、例えばお子様と一緒に作るDIY、ちょっと前までは正直作ったとしてもインテリアに馴染むの?と思われている方がたくさんいて。もちろん子どもは楽しんで作るけど、親は「これはちょっと置いておけない…」と思うものもあったりしてしまいます。

一方で、&CRAFTSが対象としている購入層は20代後半から40代前半の男女なのですが、そういう年代って、結婚して出産すると、趣味にお金を使えなくなってしまうという悩みもあると思いました。でも子どもに与えるものを買うのが親の役目、なので、親の趣味や思考が子どもに買い与える製品とドッキングさせられるようにしたいと思ったんです。

例えば、ペット用のスケボーの形をしたエサ台は人気で、スノボやサーフィンが好きな人たちが自分のペットのために購入しますし、子ども用のミニスプーンのキットも、キャンプが好きな親がお子さまに購入されていて、子どもだけでなく親が満足できるようなデザインを意識しています。

ーなるほど、そういったアイデアってどう思いつくんですか?

山本:もともと一回で終わらないものを考えていました。例えば、最近「組み立てる踏み台」を作って、小さい頃はテーブル→少し大きくなったら椅子→もっと成長したら踏み台として使ってもらうっていう長い間使ってもらえるようなデザイン設計にしています。

できるだけ一回で捨てないようにして欲しいんです。特に子ども向けの物、例えばツミキとかってだいたい3、4歳で使って、時期が過ぎたらもう使えなくなるじゃないですか。

そういったところからも着想を得て、今販売している物の中でバランスゲームを作りました。小さい頃は積み上げて遊んでもらう、少し大きくなったらルールを覚えてもらう、大人になってもバランスゲームを楽しんでもらう。商品をただひとつの物と考えるだけでなく、積木やドミノなど違う視点で物事を提案して、加えてデザイン性もかね揃えたものにするんです。

ーなるほど、視点を変えた使い方を相手へ提案することで新しい価値が生まれるんですね…!勉強になります!

FSC認証で環境問題へ取り組みたい

ーFSC認証の取得のきっかけはありますか?

山本:もともと社長(母)が製材屋で働いていた10年前に取得したのがきっかけです。山梨県自体が、FSC認証に対して前向きに取り組み始めていたんです。山梨県の県有林にFSC認証を取得して、環境に配慮した木材として取り組んでいこう!となっていたので、じゃあ自分たちも環境に配慮したビジネスをしよう!となった時、自分たちもFSC認証を持っていないとFSC認証材を使っても意味ない、だから取得したと聞いています。

▶︎山梨県とFSC認証についてはこちら

ー10年も前から!その頃の世の環境への感度ってどうでしたか?

山本:確かその頃は時代の流れが環境問題に対して若干動き出した頃で、でも今より全然活発ではありませんでした。なので、FSC認証材として商品を作ったとしても、FSC認証自体の認知度がかなり低かったんです。

一般の人がFSC認証を知らないんです。例えば、3年前くらいの頃、大きなメーカーさんへノベルティのコンペに出しても、FSC認証に対する認識が普及していないからそのメーカーさんのCSR活動として効力がないと断られたことがあるんです。

今はむしろ進んでそういった活動をしないといけない、でも3年前はまだまだ難しい状況でした。会社としては5年目ですが、ここ1、2年でやっと需要が伸び始めていると感じています。

ーそうですね、結構環境系の大きな団体さんとコラボされていますよね。

山本:はい、FSC認証は原木から製品化まで一貫してFSC/COC認証保有業者で構成しなければならず、間に入る企業が多ければ多いほどハードルが上がります。ですが弊社はそれが、より少ないプロセスで可能な連携体制が整っている会社として珍しいからっていうのもあります。なかなかFSC認証を取得するメリットが日本だとまだ弱いので、取得している会社が他国に比べて少ないんです。

山梨県の県有林がFSC認証を取得しているおかげで認証取得業者である当社は県内で認証材を購入でき、加工販売がスムーズに行えるのですが、一般的には、山を保有している方々がその山に認証を取らないといけないんです。そこに多額の費用を投入してまでお金を回収できるかというと、日本ではまだ難しいところと言われています。

会社自体がFSC認証を取得していても、FSC認証木材を仕入れられないと意味がない。逆も一緒で、FSC認証を取得した木材があったとしても、FSC/COC認証を取得している製材屋さんがないとFSCは途切れてしまう仕組みになっているので意味がない。

山梨県の場合は、山梨県が県有林をFSC認証を取得していることによって、林業や製材業もFSC認証をとるという流れが確立されたからうまくいっているんだと思います。もしこれが他の県からFSC認証材を森から持ってくる、となると、そこで輸送コストがかかってしまいますし、いろんな問題が発生して一個の商品作りに多額の経費がかかってしまうことにもなります。需要と供給や、木材の流れのプロセスを確立させることが大切になるんです。

FSC認証をきちんと発信しないとモッタイナイ

山本:2年前くらいに、大手家具メーカーさんが来てくれたんです。そこはFSC認証を数年前に取得していたんですが、安定供給可能な仕入れ先が見つからずにその認証を使って家具を販売したことがないらしいんです。それってすごくモッタイナイですよね。

ーなるほど…日本だとまだまだ、ということは海外ではどうなんでしょう。

山本:そうですね、もともとFSC認証制度は海外から来ていて、欧米諸国では FSC認証に限らずいろんな認証制度を大切にしています。でも日本だと、FSC認証自体に対する取得率が低く普及してない、ビジネスに取り入れたいのに思うようにいかず、頭を抱える企業も多いと聞いています。

なので、海外のメーカーの木製品には、◯◯認証というマークがついている製品をよく見かけますが、まだ認証制度が十分に普及していない日本の場合は”間伐材”というワードがひとつの指標になっています。

しかし、間伐材という”山にいい木材”というフワッとしたイメージになってしまって、そのそも間伐材って何なのか、何がどのようなメリットをもたらすのか、林業や製材業と密接な関係にいる私達だからこそ疑問を持つ点もありますし、消費者がモノを選ぶ際の線引きがうまく作られていないように感じます。

その点、FSC認証はSDGsの17目標のうち14目標を達成する事ができるという明確な説明が可能です。私達は、この大切な資源を使用しながら無駄のない製品づくりを心がけ、日本を含め多くの人々が気軽に認証製品を選ぶことができるように頑張っていきたいですね。

まとめ



山梨県のFSC認証木材雑貨を販売している、&CRAFTSの山本瑞穂さん。国内でも珍しいFSC認証での雑貨は、多くのファンを魅了しています。

良い品質を持つ木材の価値を守る、そしてFSC認証木材や木製品の新たな価値作りなど、日々山本さんの挑戦は続きます。

また、こちらの記事では山本さんの価値観が構築されるきっかけとなった経験と、そこから生まれた新しいビジネスや形作りをお伺いしています。

&CRAFTSの心温まる雑貨はこちらから、ぜひのぞいて見てください。
▶︎&CRAFTS HP

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山梨県産FSC認証材を使用した木製品ブランド。“ひと手間加える”をテーマに設計されるプロダクトは、多様化した生活スタイルや文化とサスティナブルを掛け合わせた独特な世界観が特徴。素材を最後まで使い切る事を目標に、内装やオーダー家具の提案からテーブルウェアなどの細かい製品の製造、プロデュースを行う。

山本瑞穂
&CRAFTS創設者。山梨を拠点に現在はブランドディレクターとして自社商品の開発製造や他社とのコラボ商品の企画提案などを行っている。