INTERVIEW

若者目線でファッション問題に取り組む「carutena」。現役学生たちが目指すファッションの未来とは。

みなさんは、日本では1年間でどのくらいの服が廃棄されているかご存知ですか? 株式会社日本総合研究所の算出によると、日本国内で新規供給される衣類の量は81.9万トン(2020年)に上ります。その約9割に相当する78.7万トンが事業者と家庭から排出されており、そのうち廃棄処分される量は51.0万トン。つまり排出される衣類の64.8%が産業廃棄物や一般廃棄物として処分されています。 6割以上が廃棄されている服、そしてファッション業界の問題に立ち向かうべく設立された学生団体「carutena」の共同代表である吉田羽那さんに今回はインタビューをしました。 アップサイクルだけではなく、様々な活動を行っているcarutenaさんの活動や目指す展望は必読です!

バッグを作るだけではない、社会をよりよくするために多角的な視点で考える

carutenaがどのような活動をしているか教えてください。

吉田さん(以降敬称略): carutenaは、ファッション産業の生産プロセスや大量の廃棄物が引き起こす問題にアクションを起こすために設立された学生団体です。古着として回収した服をジェンダーや年齢を気にせずに使うことができるバッグにアップサイクルをしてオンラインストアやポップアップストアで販売しています。

また、もう一つの活動の軸は出張授業です。学校や地域からの依頼を受けて、主に小学生から高校生に、団体設立や活動の動機について語り、サステナビリティに関する理解を深める場を提供しています。

また、座学だけでなく、実際のワークショップを通じてアップサイクルの楽しさや重要性も伝えています。簡単にできるエコバッグづくりなど、実践を通して学ぶことで、サステナビリティへの理解を深めることを目的としています。

今までは主に東京都内を中心に活動していましたが、最近では愛知県・名古屋市の高校からも依頼を受け、出張授業を行いました。

 

catunenaでともに活動するメンバーについて教えてください。 

吉田:carutenaは、4年制大学に通う学生と服飾の専門学校に通う学生の計22名で活動しています。

 

団体設立の背景を教えてください。

吉田:私は2代目の共同代表ですが、carutenaは2人の上智大学の学生によって設立されました。団体を設立した1人目のメンバーはファストファッションブランド・ZARAでアルバイトをしており、その際に大量に売れ残った服の行き場に疑問を抱いていました。その後独学で勉強をしていく中で、服の大量廃棄の実態を知りました。もう1人のメンバーは大学で国際関係の授業を受講した際に、ファッション産業の生産過程に非常に疑問を持ち、carutenaを設立することになりました。

古着を集めてバッグにアップサイクルしているとのことですが、古着回収はどのような形式で行っているのでしょうか?

吉田:古着回収は、メンバーの知人から譲ってもらった衣類もありますが、オンラインでも随時募集しています。また、実際に人が集まる駅で古着回収をすることもあります。その際は事前にInstagramで呼びかけをしております。

 

アップサイクルだけではなく、出張授業など様々な活動を行っていると思いますが、carutenaの強みはどんなところにありますか?

吉田:carutenaの最大の強みは、多角的なアプローチができるということです。

先ほど申し上げたように商品販売と出張事業を主な活動として展開しています。そのように2つの活動を同時に行う団体は少ないのかなと思います。また、Instagramのサブアカウントではエシカルや環境問題に関する情報を発信しています。

また学生による視点を持ちながらデザインをするということも強みだと思います。

全ての商品が学生によってデザインされていることで、学生ならではの視点やデザインセンスが反映され、同世代に刺さりやすい商品をつくることができます。商品は単なるアイテムではなく、思いやメッセージが詰まったものとなっています。

未来世代へのアプローチを中心に活動をされているのですね。

吉田:はい。ただ、最近は持ち主が亡くなってしまい空き家になってしまった民家にある古着をリメイクしてほしいという依頼を受けました。

今後は未来世代だけではなく、様々な層に向けてのアプローチができればと思っています。

 

様々な企業とコラボレーションを行ってきたかと思いますが、印象的なコラボレーションについて教えてください。

吉田:様々な企業とコラボレーションを行いましたが、個人的に一番印象的だったのが、パソコンを扱うLenovoとのコラボです。デニムを使ったPC用のトートバックを作るプロジェクトでした。当時、デニムはその厚さや硬さから、縫いづらくアップサイクルには向いていないという認識がありました。しかし、そのデニムを利用してトートバッグを作成するというプロジェクトが立ち上がり、その過程でデニムが持つ可能性に気付くことができました。アップサイクルを通じてデニムがどれほど可愛く変身できるのか、その実感が得られた瞬間でした。

このコラボレーションで、デニムの可能性を知り、アップサイクルがデザインの領域においても新たな可能性を知ることができました。

 

今後どのような業界や企業とプロジェクトを共創していきたいですか?

吉田:まず1つめはファストファッションブランドとのコラボレーションです。これまでエシカルやサステナブルに関心のある企業とコラボしてきましたが、今後はあえて問題の根本であるファストファッションブランドとコラボしたいです。例えば、ファストファッションで売れ残ってしまった商品をアップサイクルし、新たな価値を生み出す取り組みを行いたいです。また、ブランド側との対話を通じて、ブランド側がどのような視点で取り組んでいるのかを知りたいです。

2つめは専門商社とのコラボレーションで、透明性の高い製品を提供することを目指しています。製品がどのように作られ、最終的な地点までたどり着くかについて、できる限り透明性を持って、生活者が安心して製品を選べるようにしたいと考えています。また、商品が使い終わった後は自然な形で土に戻すことができる取り組みも進められたら面白そうだと思います。

さらに、作業服のリメイクにも注目しています。ファッション以外の服、たとえば使い古した制服や作業服などに新たな価値を見出し、アップサイクルすることで、これらの服が持つポテンシャルを引き出したいと考えています。特に、ファッションに興味のない層にも、自分の服が新たな形で再利用されていることを知ってもらうきっかけとなるだろうと期待しています。

 

今後団体としてはどんな展望をお持ちですか?

吉田:今まではサステナブルに興味がある人を中心に私たちの活動を知ってもらっていましたが、1人でも多くの人に服の大量廃棄について知ってもらうということが、最も重要なゴールだと思っています。そのためには、フリマアプリや古着屋で売ること以外に、carutenaに古着を持っていくということも一つの選択肢として選ばれる存在になりたいです。

また商品を製作する際にでた布の切れ端を本のしおりとしてアップサイクルしていることもあります。このような取り組みや透明性をより多くの人に知ってもらい、理解してもらうことが今後の課題になるかなと思います。

最後に、直近で何か参加できるイベントはありますか?

吉田:はい。2月12日(月)と13日(火)に東京の高円寺にて、ポップアップストアを出展します。今回は『デニムコレクション』と称してデニム生地を中心にデザインした商品もご用意しております。またワークショップも開催する予定です。

立ち寄るだけでも可愛いポップアップストアとなっておりますので、ぜひお立ち寄りください。ポップアップの詳細は、Instagramより順次発信しております。

 

Plannersのイベントにも参加

いかがでしたか?様々なところにアンテナを張って活動しているcarutenaの活動には、Plannersメンバーもいつも感銘を受けています。

2月に開催されるポップアップストアだけでなく、Plannersが2月25日(日) に東京・北千住マルイにて開催予定の防災をポジティブで楽しいものへとシフトする「アタラシイ防災」をつくるプロジェクトにもcartenaも参加予定です。

25日当日は、ワークショップを開催し、消防署で使用されていた廃棄予定の制服や消防服を活用して巾着を販売予定です。避難用リュックに入れるだけではなく、普段使いにもおすすめなバッグ。巾着の紐の部分を腕にかけられるため、サニタリーグッズを持ち運ぶのにも便利な利用シーンを選ばないバッグになっているので、ぜひ当日はcarutenaのブースにもお立ち寄りください!

 

現在、さまざまな社会課題に取り組む、carutenaをはじめとする学生団体や、企業、自治体、メディアの方々と一緒に、互いに手をとり合いながらイベントを企画しています。詳細が決まり次第公開いたしますので、お楽しみに!

Plannersにご興味のある企業や個人の方は、お問い合わせよりご連絡ください。

 

執筆:小林

 

参考資料

株式会社日本総合研究所「環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務 -「ファッションと環境」調査結果」https://www.env.go.jp/policy/pdf/st_fashion_and_environment_r2gaiyo.pdf