INTERVIEW

次世代の防災リーダー「学生団体Genkai」。現役学生たちが目指す防災の未来とは

みなさんは「防災」と聞いて、どんな印象を持ちますか? 必要なことだと分かっていても、どこかちょっと他人事で、敷居が高いイメージがある方も多いのではないでしょうか。 一方で、政府機関『地震調査研究推進本部』によると、南海トラフ地震、首都直下地震ともに、今後30年間に70%の確率で発生すると言われています。また、災害は地震だけでなく、近年よくニュースになっている土砂崩れや、噴火、気象災害など様々なリスクがあり、いつどこで何が起こるかわからないからこそ、「防災」は全員が自分ごととして捉えるべきテーマです。 そんな中、防災を「難しい」「つまらない」ものから「楽しい」ものに変えようと活動する学生団体があります。それが、神奈川県・鎌倉を拠点に活動する「Genkai」です。中学2年生から大学生3年生までの36名が所属し、防災士の資格を持つメンバーもいます。次世代の防災リーダーたちが目指す防災の未来について、Genkai代表・橋本 玄さん(以降、敬称略)に話を聞きました。

防災を「難しい」「つまらない」ものから、「楽しい」ものに変える

Genkaiがどのような活動をしているか教えてください。

橋本:Genkaiは「好き×防災」というテーマで、防災を「難しい」「つまらない」ものから「楽しい」ものに変える活動をしています。具体的には、防災運動会や防災アドベンチャー、東日本大震災の被災地との交流事業など、多くの方に防災を自分ごととして捉えていただけるプログラムを実施しています。

Genkaiで共に活動するメンバーについて教えてください。

橋本:中学2年生から大学3年生まで、合計36名で活動しています。もともと防災に興味があって防災士の資格を持つメンバーもいますが、大半はこれまで防災にあまり関心を持っていなかったメンバーです。

防災にあまり関心がなかったメンバーが多く在籍しているのは、「好き×防災」を提唱しているためです。よく「夢を形にするプラットフォーム」とも説明しており、例えば映像をつくってみたいであったり、将来子どもと関わりたいであったり、それぞれの夢や得意を、防災を題材に形にできるプラットフォームとして活動しているため、夢を形にしたいメンバーが集まっています。

その結果、活動を通じて防災士の資格を取得したり、東日本大震災の被災地で研究を行うメンバーも出てきました。

団体設立の背景を教えてください。

橋本:活動は2020年からスタートし、2021年に団体を設立しました。私自身が防災教育に違和感を持っていたことがきっかけです。学校で行われる避難訓練において、事前に避難訓練があることを知らされていて、予定通りに地震が起き、生徒たちはただこなすように逃げるだけの避難訓練に疑問を感じ、何か新しいアプローチができないかと考えて活動を始めました。

違和感を持ってから、実際に団体設立の行動に移る原動力は何でしたか?

橋本:東日本大震災で被災した方々との交流が大きな原体験でした。特に、「支援してくれるのは有り難いけど、あなたの住んでいる街は大丈夫なのか?」という被災者からの質問が、自分自身の身の回りの防災について考え、防災への興味を深めるきっかけとなりました。

どういう経緯で東北の被災者と交流する機会があったのですか?

橋本:私の父親が長く東北で支援活動を行っており、その関係で父と一緒に東北を訪れました。震災当時はまだ幼かったですが、現地の方と交流を重ねる中で、防災への思いが育まれていきました。

防災を興味ない人にも自分ごと化してもらい、興味を持ってもらうために重要なことはなんだと思いますか?

橋本:自分が被災することをいかに考えられるかが重要だと思います。南海トラフや首都直下地震などのリスクに対して、自分が被災する可能性を意識し、自分に合った防災を考え、どう対応するかを考えることが大切だと思います。

被災地を訪れたり、被災経験がないとなかなか自分ごととして想像するのは難しいと思いますが、どうすれば良いとお考えですか?

橋本:実際に被災した方々の生の声を聞き、それを自分の状況に置き換えてみる機会をいかに与えられるかがとても重要だと思います。また、年齢層や状況によって直面する課題や状況は違うと思うので、それぞれに合わせた経験を伝えていく必要があると思います。

目指すは、すべての人が「私の防災は〇〇だ」と言える社会

防災意識を広める活動をする上で、団体として抱えている課題は何ですか?

橋本:横の広がりです。今社会的には、防災活動を行なうことが当たり前ではなく、特別になってしまっていると感じています。防災はやって当たり前で、誰もが「私も防災してるよ」と言える社会を、一緒に創る横の広がりをつくっていきたいです。

過去に企業とのコラボレーションや共同でプロジェクトを実施したことはありますか?

橋本:例えば、発達支援の教室を運営されている教育系の企業様に対して、外部講師として防災の話をしたり、企業様の商品と防災を絡めた展示を行なったりしてきました。

Genkaiだからこそ提供できる価値や、ユニークポイントは何だと思いますか?

橋本:新しい防災を提供できることだと思っています。世の中にはすでに素晴らしい防災普及活動も多くありますが、その中でもGenkaiは、情報社会を生きる学生ならではの視点から、社会のニーズを捉え、新しい防災の形を生み出して発信していることが強みだと思っています。

そのような強みを活かして、今後、どのような企業や業界と連携していきたいですか?

橋本:「アウトドア業界×防災」に興味があります。今回の能登半島地震でも、現地にいるメンバーからは、水や電力が供給されていなかったり、車中泊を強いられている場所も多くあるという課題を聞いています。そういった時に、ろ過技術や車中泊を少しでも快適にする技術など、アウトドア業界が持つ技術や知見を防災に活かしたいと考えています。

実際に私自身、去年まで約1年間、UPI OUTDOORというアウトドアブランドでお仕事をさせていただきました。そこでの経験からも、「アウトドア業界×防災」の可能性を感じています。今後Genkaiとしても、アウトドア業界の企業様とつながりながら課題解決に挑戦していきたいと思っています。

具体的にご一緒したい企業様はいらっしゃいますか?

THE NORTH FACE様、mont-bell様、Patagonia様などは、アパレルだけでなく様々なギア等も多く展開されている企業様なのでご一緒できたら嬉しく思います。

橋本さんが、2030年までに目指したい社会を教えてください。

橋本:すべての人が「私の防災は〇〇だ」と言える社会です。私は、全員にそれぞれの防災があると思います。例えば私の場合、鎌倉の内陸部側に住んでいるので受け入れる地域としての防災体制の構築や、日々防災に関する活動を行う身として情報発信が、自分の防災だと思い、日々行動しています。日本に暮らす全員が、それぞれの立場や拠点などに合った防災を自分で考えて、「私の防災は〇〇だ」と言える社会を目指したいです。

能登半島地震が発生、まずは街頭募金から実施

最後に、能登半島地震に対して募金活動を行なっているとお聞きしました。

橋本:被災地域のニーズがまだ十分に把握できていない状況なので、Genkaiとしては今できる支援として、まずは募金という形で支援させていただいています。1月10日から20日まで街頭募金を行っており、集まった支援金は石川県七尾市で牡蠣の養殖を営まれている地元企業に全額寄付する予定です。

Genkaiの活動拠点である鎌倉ともつながりがある企業様で、今回被災し大変な状況になっています。行政への寄付なども検討しましたが、目の前の困っている方を支援しようということになりました。寄付の詳細はInstagramでも発信していきます。

 

Plannersも「アタラシイ防災」を広めるイベントを開催

当メディアを運営するPlannersでは、「防災」を注力テーマの一つとして掲げ、活動しています。

今回、次世代の防災リーダーたちの素敵な取り組みと想いを伺い、とても胸が熱くなりました。今後Genkaiさんをはじめ、同じ課題意識を持つ方々と協力しながら防災意識を広めていきたいという思いがより強くなりました。

防災をポジティブで楽しいものへとシフトする「アタラシイ防災」をつくるプロジェクトの第1回として、2月25日(日) に東京・北千住マルイにてイベントを開催予定です。

現在、さまざまな社会課題に取り組む、Genkaiさんをはじめとする学生団体や、企業、自治体、メディアの方々と一緒に、互いに手をとり合いながらイベントを企画しています。

詳細が決まり次第公開いたしますので、お楽しみに!

Plannersにご興味のある企業や個人の方は、お問い合わせよりご連絡ください。

 

執筆:内山

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